衝撃のフォロー (後編)

 

では、前回の選択肢を検討してみましょう。

 まず、2番。

 確かに素直に謝るとポイントは高いのですが、ショックな記憶には何も変化を及ぼしません。そしてそれは、5番も同じです。「謝る」「ごまかす」という別系統の情報では、相手の心のしこりは、依然として残りつづけてしまいます。

 

 3番はある程度心理学を学んだ人なら、ほとんどが引っかかってしまうかもしれません。 なぜなら心理学には「新近効果」という「後に言ったセリフがもっともインパクトを与える」という理論があるからですね。

 

 しかし、相手はショックな言葉で「自分は他人よりも劣っている」という気持ちになっています。そんな状態で「他の部分では、他人よりも優れているよ」と言われても あまり心には響きません

 

 これを裏付けるのが、『マズローの5段階欲求』という理論です。そこでは、『親和欲求(人と同じになりたいという欲求)が満たされない限り、認知欲求(人より優れたいという欲求)を考えることはできない』と言われています。

 加えて、話をそらすように『誉める』ことは、やはり『悪口』とは別系統の情報なのでショックな記憶を薄めることはできないのです。

 

 それでは…もっとも有効なのは、1番と4番の、どちらでしょう?

 

 正解は、4番。同じ系統の情報(ここでは悪口)を繰り返すことで、少しずつ最初のショックの記憶を取り去るという方法です。「バカ!」と言って黙り込まれるよりは、「バカ! アホー! ダメ人間ー! へっへーんだ!」なんて風に、連発されたほうが、気持ちが楽になりますね!?

 

 ……と、今までの心理学では言われてきました。

 でも、あなたなら納得できますか? 実際にできそうでしょうか?

 

 

 机上の空論とは、まさにこのこと。

 いくら効果があるといっても、実際にショックを受けている人に、それ以上の悪口なんて、言えるワケがありません。

 

 それでは正解は!?

 

 「その悪口を自分に対しても適用させる」のです。 これも対象が違うだけでやはり「悪口」という同系統の情報を喋るので、「逆行抑制」によって相手のショックな記憶を薄めることができます。そして同時に、「自分も同じ」と言うことで相手の「自分はみんなより劣っているんだ」と思う気持ちも癒すことができるのです。

 

 そして何より、償いの気持ちから気楽に言いやすいセリフです。すなわち正解は1番。

 これこそが、スーパーメソッド「心中の舌先」!

 

 

 うっかり相手を深くキズつけるセリフを言ってしまったときは、すぐに『自分にもそのセリフを使う』こと! 

「バカッ!」なら、「……って、俺もバカなんだけどな……」

「最低!」なら、「……まぁ、私も最低だけど……」

 それだけで相手の心の傷を、もっとも早く癒すことができます。

 

 

 どんなに気をつけても、どうしても失敗は起こってしまうこともあります。大事なのは失敗しないことではなく、失敗したときいかにカバーするかですよ。